決着
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管理局X-FILE No00256389「アースラ乗員消失事件」

最終話「決着」




管理局X-FILE No00256389「アースラ乗員消失事件」⑪


前回まで
ロストロギア本体の正体を見極めた"私"
自分を探す端末達が活動を再開しタイムリミットが迫る中、
決着をつけるべく本体が巣食う機関室へと足を踏み入れる。
異界と化した機関室でついに姿を現す本体、

生き残るのは私か、■か、

管理局X-FILE―――最終回「決着」




突然足首を掴まれバランスを崩す。
私「っ!?」
倒れたざまに見た光景を私は一瞬理解できなかった。
影――"私自身の影"が上体を起こして足を掴んでいるのだ。
本来の影に同じ形のシールを貼っていたかのように偽の影が立体化している。

影として本人に付き纏って情報収集を行っていたのか!
私「つくづく怪談地味た奴だな貴様は……っ!」
振りほどこうとするが押しても引いても影はぐにゃぐにゃと動いて手応えが無い。
まるでタールに足を突っ込んだような感触だ。
■「■■■■■■■■■■■■■■■」
相変わらず聞き取れない音声を発しながら影が形を変えていく、
―――私の顔に。




モーフィング映像のように影の顔部分だけが鏡のように私の顔になる。
私「随分焦っているようじゃないか、私をコピーするにしてはお粗末だなっ……!」
拘束から逃れようともがきながら通じるかもわからない皮肉を口にする。

恐らく感情的ではないにしろプログラムとして緊急の判断なのだろう。
本来「入れ代わり」は完全にオリジナルの情報を得た上で行うはずだ。
それなら足元から相手を取りこむと同時に擬態、まさに呼吸する間も無く一瞬で終わる。
だが今の奴は不完全な状態で出てきた、私という存在を100%情報化できていないのだ。
全てはこの場所のせいだと思っていいだろう。
ここには奴の「仕事」にとって重要な何かがある、だから私の侵入に焦って出てきたのだ。
そうでなければ私の影に隠れ続けていればいい。
私「だが自分の姿を勝手に使われるのは気持ちのいい物ではない……なっ!」
ズバンッ
肩口から袈裟切りに斬撃を浴びせ離脱する。






ドンッ
そのまま飛び退いて奴と距離を取ろうとすると部屋の中央で何かにぶつかった。
私「?」
球体……部屋中を覆う黒い根のような物が編み合わさって出来た籠のような球体だ。
中は琥珀色の液体で満たされどういう原理か密閉されていないのに漏れ出る様子もない。
そしてその中には……
私「―――――っ!」
先程まで行動を共にしていた部下達、それにクロノ執務官を始めアースラの乗員達がいた。
生死は不明だが何十人と言う人間がその中に浮かんでいる。
私「貴様……ここでなにをしているんだ……!」
私が睨みつけると奴は不定形な状態から形を成していった。

■「■■■ハ■■デ■■■タ■■■ル」
いくらかノイズの消えた声で喋る人の形を得たロストロギア。
そこには"私"がいた。





私「そんなザマでふざけた事を言ってくれるな……」
先程とは違って今度は全身私その物と言っていい完璧な姿だ。
他人に奴の写真を見せれば間違いなく私と認めるだろう。
だが断言できる。私をよく知る者……知人や家族、部下達には通用しない。
私「拍手したいところだがそれでは手練の者が使う変身魔法の方がマシだな」

今奴が行っているのは"擬態"ではない。
対象の内面情報が不完全なまま表面のみコピーしたただの変身だ。
私「確かに愛想が良い方ではないが……そんな能面顔で生きているつもりは毛頭無い!」
デバイス<Burst Blast>
ドゴオオオオオォォォォォン!

まだフラついた様子の奴に容赦無く攻撃を放つ。
直撃した奴はそのまま機関室の外へ吹き飛ばされた。






私「今の内に――!」
ズバンッ
ドバシャアアアアアアア
球体を切り破ると中から液体と共に被害者達が溢れ出てくる。

私「おい!しっかりしろ!私がわかるか!」
身近にいた部下の体を揺さぶり生死を確認する。
部下「……ぁ……げほっ!っは!……」
意識は無いが呼吸はしている、他の者も同様に生きているようだ。
とりあえずこの様子なら大丈夫か。後は……

入口に佇む奴に目を向ける。
先程は能面のようだった奴が、口を歪めて笑っているのが見えた。





奴は表情を得ている、この短期間に擬態の完成度を高めた事は驚嘆に値する。
私「だが今更擬態した所で意味を成さんぞ!」
続けざまに連続して攻撃を浴びせる。
ドガッドォオオオン!
だが――――――
私「…………!」
先程よりも重い攻撃を与えたはずなのに、奴は吹き飛ばずに踏み止まっていた。

グニャリ
私の姿を模した奴の体から無数の黒い槍が出てくる。
ドガガガガガガガガガガガ!
私「――クッ!」
まるで始めから私が困惑するのを見越していたように、
奴の顔は歪んだ笑いを作り続けていた。






先程までとは一変して急に攻撃的になったな……
奴は端末と同じ不定形な状態よりも擬態して姿を得る事で本来の実力を発揮するようだ。

だがマズイな……避け様によっては後ろにいる動けぬ被害者達が巻き添えになる。
だが別の場所へ移動するにしても奴が入口に立っている以上それは不可能だ。

……いや、一ヶ所だけある。戦闘に十分な広さを持ち、私だけがすぐに行ける場所が。
あんな場所を選ぶなど我ながら正気の沙汰ではないと思う。
だが助かる見込みのある彼らを巻き込まずに済む方法はこれしかない……
私の立場上この状況においては奴の殲滅が最優先時効だろう。だが私は優先できない。
少年少女を躊躇い無く犠牲にするなど、人の親になった今の私には出来るはずも無い。
教官にも同僚にも長生きしない性格と言われ続けてきたが今日まで生き残ってきた。

私「ついて来い、貴様らにハンデをくれてやる」
我ながら強がり極まりない台詞と共に――――私は格納庫へと転移した。





キイイイイイイイィィィィン
格納庫への転移が完了すると同時に私はデバイスを構える。
端末が私が現れたことに気付くが―――遅い!
ギイイイイィィィィィン!
カラカランッ
奴らが臨戦体制でなければ速攻で方がつく、強制干渉魔法で即座に2体を封印した。

ズルズルズルズルズルズルッ
やがて小型艦の中から、通路の奥から、私を捜索していた端末達が集まり始める。
間も無く本体もここに到着するだろう、それまで1体でも数を減らさねば―――!
ドガガガガガガ
私「ワンパターンが過ぎるな!いい加減飽きた!」
ギイイイイィィィィィン!
カラカラカラカランッ
背水の陣による覚悟からか、いつにない魔力の高まりを感じながら次々に端末を沈黙させる。




カランッ
私「15っ!」
15体目の端末を封印した時にようやく奴は現れた。
私「せっかく有利な状況で戦ってやろうとしたのに随分と悠長な到着だな」
強がって見せるがまだ端末は数体残っている。それに私の魔力も大分削られた……
私「それに……私はそんなにニヤついた記憶は無いんだがな」

■「そうか?"ワタシ"の手足を最初に仕留めた時"私"はこんな表情だったぞ?」

!!!!!!!

ノイズ交じりではない、肉声で、しかも私が話すかのような口調で奴は喋った。
自分では判別できないが恐らく声も私その物だろう。
更に私に近くなっている……そう思うと背筋が寒くなった。





私「流石に気味が悪いんでな、そろそろ片をつけさせてもらう!」
■「そうだな、"私"は二入もいらない。偽者には消えてもらう!」

近親憎悪という言葉があるがこれは違う、自分を盗まれる事がこれほど腹立たしいとは――!
ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!
本体と端末達が一斉に攻撃してくる。
私「それしかないのかお前達は!」
既に何度も捌いた触手の雨を交わしつつデバイスを構え攻撃体制を取る。
が、
私は鏡を見ているかのような錯覚を起こした。
向かいに同じポーズの私がいる……そう同じ、同じデバイスを構えた私が!

デバイス<Burst Blast>





ドゴオオオオオオオオオオオオン!
私「っ!がはっ!」
吹き飛ばされたのは驚きのあまり後手に回った私だった。
私「貴様っ……私の技を……!」
■「あぁ"私"の魔法だよ。結構キツイだろう?」
不覚だった……!考えてみれば奴はフェイト本人としてデバイスで戦っていた。
擬態はデバイス等の本人を象徴する対象全てとは大した技術だ。

ズルズルズルズルズルズルッ
倒れ伏した私に端末達が迫ってくる。
■「さぁ退場願おうか、貴様を取り込み貴様を知れば"ワタシ"は"私"になれる!」
私「クッ!」
待て……今奴は貴様を"知れば"と言った。
そうだ、自分で言ったじゃないか、奴は完全に擬態出来ていない。
私がアースラに来てから今現在までの情報だけで私を形作っているに過ぎないんだ!




近づいてくる端末達、奴は勝利を確信しているだろう。
だが私がこのアースラで部下任せにして一度使っていない魔法がある!
ジャラララララララララララガシャンガシャンガシャン
突然空間から現れた光の鎖が奴と端末達を拘束する。
■「っ!……ふん、バインドか?初見だが解析にそう時間は掛からないな」
その通り、ロクに動けぬ私では逃げることも出来ない。
封印するにしても端末と違い奴の核はそれほど単純に捕捉出来ないだろう。
だがこのバインドは我ながらえげつない特性を持っている。
■「なんだ……力が!?」

ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ
拘束した相手の魔力をチェーンバインドで連結させた魔力スフィアに吸収させる。
自分の魔力で自分を攻撃させるという効率的だが人間性を疑われそうな魔法だ。
私「だが相手によっては躊躇無く使えるんでな!」
デバイス<Ballista>





ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!
奴自身が今まで溜め込んだ魔力による砲撃だけあって凄まじかった。
通路側の壁が消し飛んでいる、外壁方向に放っていたら大惨事になっていだだろう。

後には消し飛んで姿も無い端末達と、バラバラに砕け散った奴の四肢が落ちていた。
自分のバラバラ死体を目の当たりに……間違い無くトラウマになるな。夢に出る。
バシャッズルズルズルッ
私の体だった物が崩れタールのような黒い姿に戻る。
私「っ!まだ停止していなかったか……!」
留めを刺そうと倒れたままデバイスを向ける。
あれだけ弱体化していれば端末と同じ要領で行けるハズ―――

バガンッビシュルルルルルルルドスッ
私「ぐああああああああああああ!」
だが床を突き破ってきた奴の触手が、私の腕を貫いた。





私「ぐううううう……!」
貫かれた腕の痛みを堪えていると奴が集まって形になる。
バキメキメキメキメキメキメキ
床を突き破ってせり上がってきた黒い木は奴の残骸を頂点に5M程の姿になった。
機関室に張り巡らされていた黒い根……あれが本体だったのか……!
どこまでも裏をかいてくれる。実に嫌な相手だ。
私「それに……それは嫌がらせのつもりか貴様」
不気味な巨木になったにも関わらずその幹には私の顔が浮き出ていた。
ギュン
私「うぐあっ」
腕を刺したまま私を手繰り寄せる本体、眼前にある私の顔は無表情だった。
先程の饒舌だった端末、あれは私の思考パターンを元に喋らせていただけなのだろう。

こいつの本質は、プログラム通りに事を進める無機質な兵器なのだ。





周りを見ると奴の枝には不自然に大きな実がついている。
半透明の膜から覗ける中には今までよりやや輪郭がはっきりしたあの黒い端末が見える。
私「お前の子供というわけか……薄気味悪いな」

ズズズズズズズズズズズズ
私の顔が消えるとそこを中心に大きく開いていく。
致命的に不足した魔力を早速私で補おうと言うのか。
私「そうだな、それが効率的だ。だからこそ……私もそれを待っていた!」
奴に腕を貫かれても握り締めていたデバイスを左手に持ち替える。
ドブッ
その腕を自ら奴の"口"に突っ込むとそのまま飲み込もうと私を押し込んでくる。
私「あぁそうだ、そのまま飲み込め……」
ズブブブブブブブ
その間も左手に握ったデバイスで魔法を発動させる、低コストの、サーチ魔法を。
私「見つけた!」




ガシッ
見つけた!奴のコア!
この大きさだと外部からの干渉では核を捕捉出来ないが内側からなら別だ。
奴の内側という空間をサーチすれば魔力の一際強い位置などすぐわかる。
だが強制干渉を行う魔力などもう無い、最後の頼みはこの手一本だ!

私「お前と私、残った魔力が多い方の勝ちだ!」
左手にいくらも無いありったけの魔力を込める、
直接封印―――競り負ければ破滅する危険な行為だがそれしか手段は無い!
奴にしてみれば心臓を鷲掴みにされたようなものだろう、
もっともプログラムにそんな感覚があるかは疑問だが。

■「・・・!■■■■■■■■■■■■ーーー!」
私「おおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
ギイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!





私が目を覚ましたのはそれから3日後、本局の医療施設のベッドだった。
我々が連絡を断った後に派遣された捜索隊の第2陣によって救出されたのだと言う。
その際被害者は全員機関室で発見、保護。私は格納庫で気を失っていたそうだ。
奴本体の姿は無く私の手には破壊された魔力結晶が握られていた、私は勝ったのか……

本局には事態をありのままに説明した。
到底信じ得る話ではないがアースラの記録映像や乗組員の証言により信憑性を得た。
だが今回の件は管理局の醜態を晒す内容である事、
ロストロギアの破壊により解析不可能である事から公にはされなかった。
こうしてまた「解決未処理事件」として本件はX-FILE扱いとなった。

命を張った身としては不満が残らないわけではないがこれが組織だ。
それに先に回復したアースラの乗組員や部下達の見舞いを受け、私は自分の仕事に満足した。




あれから私は回復し今では現場に復帰している。ふと考えてしまうのはあの事件。
あのロストロギアは内部から敵対勢力を崩壊させるための戦略兵器として片付けられた。

だが本当にそうだろうか?
ならば何故被害者を生かして拘束していたのか?
奴はあの球体で何を行っていたのか?

私が最後に見た今までと違う輪郭のある端末、考えてみれば人型に見えなくも無かった。
奴の能力"擬態"、アレを端末にも可能にするために被害者達を分析していたのだとしたら……
ノイズ交じりの奴の言葉、「■■■ハ■■デ■■■タ■■■ル」
あれは……

■「ワタシハココデオマエタチニナル」




だが私は確かに奴の核を掴み、破壊したのだ。
仮に奴の本来の目的がそうだったとしても、もうその脅威は無い。
半ば自分に言い聞かせるように私はそう結論付けた。
部下「隊長?どちらへ?」
私「あぁ、書類を提出してくるだけだ」
カシュン

だが、
私は今でも、
次に会う時に知人が黒い影に見えないことを祈りながら日々を過ごしている。
今でも……あの足音が記憶から消えないのだ……

ズルッズルッ

管理局X-FILE No00256389「アースラ乗員消失事件」 完


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